当時は就職1年目で、その日は遠距離恋愛中の彼氏がひとり暮らししていたアパートに泊まりにきていました。
友人は勤務先の同期で、配属先は違いましたが最寄り駅が同じだったので最も仲良く付き合っている相手でした。そんな彼女から、仕事が終わって帰宅し、遅い夕飯も終えてまったりしていた午後10時頃、珍しく電話がかかってきたのです。声の調子も、普段やわらかく落ち着いた雰囲気の彼女からは考えられないほど焦っているようでしたので、一体どうしたのかと尋ねますと、自宅の鍵を紛失してしまったので一晩泊めてほしいとのことでした。
私一人だけでしたら快く承諾したのですか、運悪く彼氏がおり、狭いワンルームでは3人寝る場所も布団もありません。私までどうすれば良いのかとパニックになりながら、電話帳を引っ張り出してすぐに駆け付けると謳い文句が書かれた鍵屋さんの電話番号をいくつか調べて伝えてみました。
しかし彼女がひとり暮らししていたのは、彼女の親御さんの知人の持ち物である一軒家だったため、持ち主の許可なしに勝手に業者を入れるわけにはいかないとのことでした。しかもその家の持ち主は近所には住んでおらず、ご両親や彼女の恋人の居住地もそれなりに遠方ということで、彼女はすっかり困り果てた様子でした。働いていたのも寝泊まりできるようなスペースのある職場でもなく、結局まずはご両親に相談をということになりました。
最終的に彼女の恋人が長距離を運転して車で駆け付け、対処を手伝ってくれたそうですが、未だに彼女のためにもっとしてあげられることがあったはずだと自分の未熟さと不誠実さが悔やまれます。